逆流性食道炎

逆流性食道炎とは、強い酸性の胃液(胃酸)が食道に逆流してしまい、食道に炎症が起こり胸やけや胸の痛みなど、様々な症状が生じる病気です。
正常であれば、下部食道括約筋(LES圧)が胃の内容物の逆流を防ぐ「逆流防止弁」の役割を担っており、逆流しないようになっています。しかし、逆流性食道炎の場合は、なんらかの原因でその役割が果たせなくなり、胃酸が逆流した結果、食道が傷つけられてしまいます。
逆流性食道炎の主な症状
- 胸やけ
- 呑酸(のどや口まで酸っぱいものがあがってくる)
- 胃がもたれる
- 胸が痛む、胃が痛む
- のどの違和感
- 頻繁にげっぷが出る
- 咳などの気管支炎症状
胃には酸から粘膜を守る防御機能が働いています。しかし食道にはこの防御機能がないため、何らかの原因で胃酸が食道に逆流すると、食道粘膜は強い酸である胃酸にさらされて炎症を起こします。
また、胃酸によって活性化されたタンパク質分解酵素が食道を傷つけます。
胃から食道への逆流が繰り返し起こると、食道の粘膜にただれや潰瘍が生じ、胸やけや呑酸などの不快な症状が起こります。これが「逆流性食道炎」です。胃液には、胃酸という食物を消化するための強い酸が含まれています。
かつては欧米でよく見られた病気でしたが、近年は日本でも増加の傾向にあります。日本での逆流性食道炎の増加の理由は、食事スタイルの欧米化、社会全体の高齢化などがあるとされています。
逆流性食道炎の主な原因
大きく分けると、以下の4つがあげられます。
胃酸の出すぎ(過剰分泌)
欧米化した食生活、すなわち肉や脂っこいものなど脂肪分の多い食品を日常的に摂取するような食生活を送っていると、胃の活動が活発になりすぎて胃酸の分泌量が増加し、胃酸の逆流が起きやすくなります。同様に、食物の過剰摂取も胃の活動を活発にし、胃酸の過剰分泌を招きます。
また、ピロリ菌を除菌した後は胃酸分泌が多くなることが多いといわれていますので除菌後は注意が必要です。
逆流を防ぐ筋肉の機能低下(下部食道括約筋(LES圧)低下)
下部食道括約筋とは食道と胃のつなぎ目にあり、胃から食道への逆流を防ぐ働きをする筋肉です。この下部食道括約筋の逆流防止機能が、老化や胃の手術などにより弱まってしまうと、胃酸の逆流が防げなくなります。
逆流性食道炎の患者様に高齢者が多いのはこのためです。
一過性下部食道括約筋(LES圧)低下
食事や嗜好品によって下部食道括約筋の一時的なゆるみと胃酸分泌の増加が起こります。その原因となるのはアルコール、喫煙、高たんぱく食(肉など)、高脂肪食、コーヒー、緑茶、食べ過ぎなどです。
胃の圧迫(お腹の圧力の上昇)
腹圧の上昇も逆流性食道炎の原因として考えられます。
具体的には、円背(いわゆる猫背)やベルトなどによる腹部の締め付けや、しゃがんだり重いものを持ったりするなど力むことにより胃が圧迫され腹圧が上昇し、胃酸の逆流が起こりやすくなるというものです。
逆流性食道炎の予防
逆流性食道炎の予防は、主に生活習慣の改善が挙げられます。
下記の生活習慣に気をつけましょう。
- 脂っこいものや甘いもの、刺激の強いものを摂りすぎない
- 食べ過ぎに注意する
- 食べてすぐに横にならない
- 寝るときに少し上半身を高くして寝る
- お腹をしめつけない
- 姿勢をよくする
- タバコを止める
逆流性食道炎の主な治療
逆流性食道炎の治療は、主に胃酸の分泌を抑えて食道への胃酸逆流による傷害を抑え、食道の炎症と自覚症状を消失させることによって行います。
治療で用いられる主なお薬は、酸分泌抑制薬であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)、またはヒスタミン受容体拮抗薬(H2ブロッカー)などです。
いったん治っても再び症状がでることが多いので、日常生活に気をつけて、症状がでたときには受診しましょう。